イギリスの地名にはエディンバラやカンタベリーといった”○○バラ”、”○○ベリー”といった地名が多く存在しています。
このバラやベリーの語源は同じらしいのですが、いったいどのような意味があるのでしょうか?
また、なぜバラとベリーに分かれているのでしょうか?
今回は○○バラと○○ベリーについて解説していきます!
○○バラ・○○ベリーとは
まずは○○バラと○○ベリーの英語表記を見ていきましょう。
○○バラは「brough、burgh、borough」、○○ベリーは「bury」と表記されます。
これらは「城、砦」という意味があります。
(つまり、由来としてはマンチェスターなどのチェスター(chester、cester、caster)と同じになります。)
ゲルマン語由来の古英語に「要塞化された町、砦に囲まれた町」という意味のburg、burhがありますが、この言葉が徐々に変わっていき、イギリスの北部では「brough、burgh、borough」イギリスの南部では「bury」に変化していったといわれています。
エディンバラ(スコットランド)やカンタベリー(イギリス南部)を地図で見てみるとより分かりやすいと思います。
ゲルマン系であるドイツ語にburg「城、城塞」という言葉があり、現在でもフライブルクやハンブルクなどburgがつく地名がたくさんあります。
つまり、○○バラや○○ベリーはドイツ語と同じくゲルマン語が由来であることが分かります。
しかし、ここである疑問が生まれます。
上記でも述べているように、イギリスには城や砦を意味するチェスターがたくさん存在しています。
それなのに、なぜ同じ意味なのに違う言葉であるバラやベリーが存在しているのでしょうか?
なぜチェスターとバラ・ベリーが混在している?
それには、イギリスの歴史が深くかかわっています。
イギリスは今から約2000年ほど前、ローマ帝国に侵略され多くのローマ人が住むようになりました。
ブリテン島に住み始めたローマ人は、先住民であるケルト人と戦うために各地に城や砦である「castrum(チェスターの語源)」を建設しました。
つまり、現在地名に残っているチェスター(chester、cester、caster)はラテン系であるローマ語が由来の言葉となります。
ローマ人による支配は3~4世紀程で終わりましたが、その後ゲルマン系であるアングロサクソン人がイギリスに入ってきて住むようになりました。
彼らもまた戦争のために各地に城や砦である「burg、burh」を建設し、それらが現在のバラやベリーへと変化しました。
このようにして、ラテン語由来であるチェスターとゲルマン語由来であるバラやベリーがイギリス内に混在するようになりました。